Fuimus Troes. 栄枯盛衰

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ウェルギリウス

語彙と文法

「フイムス・トローエース」と読みます。
fuimusは「~である」を意味する不規則動詞sum,esse の直説法・完了、1人称複数です。
Trōēsは「トロイア人」を意味する第3変化名詞 Trōs,-ōis m.の複数・主格です。
この名詞の複数主格はTrōēs、複数・属格はTrōumで、複数・対格はTrōāsとなります。
「我々はトロイア人であった」と訳せます。

われわれはトロイア人であった

この文の完了時制は「今はそうではない」という事実を強調します。トロイア戦争にてギリシャ軍に敗れたトロイアの英雄アエネーアースの言葉として作品(『アエネーイス』)に出てくる表現です(Aen.2.325)。

この文の続きは、fuit Īlium et ingens / glōria Teucrōrum.となります。

直訳は、「イーリウム(トロイアの別名)があった(=今はない)。そしてトロイア人の(Teucrorum)大いなる(ingens)栄光も(gloria)あった(=今はない)」。

タイトルの言葉は「栄枯盛衰」と意訳してもよいでしょう。

前後関係を含めてもう少し読んでみる

2.324-327

‘vēnit summa diēs et inēluctābile tempus
Dardaniae. fuimus Troēs, fuit Īlium et ingens               325
glōria Teucrōrum; ferus omnia Iuppiter Argos
transtulit; incensā Danaī dominantur in urbe.

『最後の日が来た。避けることのできない時がダルダニアに
やって来た。われわれトロイア人もイーリウムも、偉大な 325
テウクリア人の栄光も過去のものだ。残酷なユッピテルが、すべてをアルゴスに
運び去り、ダナイー人は都に火を放ち、支配者となった。

語彙と文法
vēnit: veniō,-īre(来る)の直説法・能動態・完了、3人称単数。
summa: 第1・第2変化形容詞summus,-a,-um(最後の)の女性・単数・主格。diēsにかかる。
diēs: diēs,-ēī c.(日)の単数・主格。文の主語。
et: 「そして」。diēsとtempusをつなぐ。
inēluctābile: 第3変化形容詞inēluctābilis,-e(避けられない)の中性・単数・主格。tempusにかかる。
tempus: tempus,-poris n.(時)の単数・主格。
Dardaniae: Dardania,-ae f.(ダルダニア)の単数・与格。「ダルダニアにとって」。
fuimus: 不規則動詞sum,esseの直説法・完了、1人称複数。
Troēs: Trōs,-ōis m.(トロイア人)の複数・主格。
fuit: 不規則動詞sum,esseの直説法・完了、3人称単数。
Īlium: Īlium,-ī n.(イーリウム)の単数・主格。
et: 「そして」。Īliumとglōriaをつなぐ。
ingens: 第3変化形容詞ingens,-gentis(大きな)の女性・単数・主格。glōriaにかかる。
glōria: glōria,-ae f.(栄光)の単数・主格。
Teucrōrum: Teucrī,-ōrum m.pl.(テウクリー人)の属格。
ferus: 第1・第2変化形容詞ferus,-a,-um(無慈悲な、残酷な)の男性・単数・主格。Iuppiterにかかる。
omnia: 第3変化形容詞omnis,-e(すべての)の中性・複数・対格。
Iuppiter=Juppiter: Juppiter,Jovis m.(ユッピテル)の単数・主格。
Argos: 「アルゴス」を意味する中性・単数の名詞Argosの対格。「アルゴスに」。
transtulit: transferō,-ferre(<ある場所から他へ>運ぶ)の直説法・能動態・完了、3人称単数。
incensā: incendō,-ere(火をつける、燃やす)の完了分詞、女性・単数・奪格。urbeにかかる。inがあるので「絶対的奪格」ではない。
Danaī: Danaī,-ōrum m.pl.(ダナイー人)の主格。
dominantur: 形式受動態動詞dominor,-ārī(支配する)の直説法・現在、3人称複数。
in: <奪格>で
urbe: urbs,-bis f.(都)の単数・奪格。

逐語訳
「ダルダニアにとって(Dardaniae)最後の(summa)一日(diēs)と(et)避けられない(inēluctābile)時が(tempus)訪れた(vēnit)。われわれはトロイア人(Troēs)であった(fuimus)。イーリウム(Īlium)と(et)テウクリー人の(Teucrōrum)大きな(ingens)栄光が(glōria)あった(fuit)。残酷な(ferus)ユッピテルが(Iuppiter)すべてを(omnia)アルゴスに(Argos)運び去った(transtulit)。ダナイー人は(Danaī)火をつけられた(incensā)都(urbe)の中で(in)支配している(dominantur)。

文献案内

翻訳は京大出版会から出ている岡・高橋訳がお勧めです。

アエネーイス (西洋古典叢書)
ウェルギリウス 岡 道男・高橋宏幸
4876981264

ウェルギリウス

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この記事を書いた人

ラテン語愛好家。京都大学助手、京都工芸繊維大学助教授を経て、現在学校法人北白川学園理事長。北白川幼稚園園長。私塾「山の学校」代表。FF8その他ラテン語の訳詩、西洋古典文学の翻訳。キケロー「神々の本性について」、プラウトゥス「カシナ」、テレンティウス「兄弟」、ネポス「英雄伝」等。単著に「ローマ人の名言88」(牧野出版)、「しっかり学ぶ初級ラテン語」、「ラテン語を読む─キケロー「スキーピオーの夢」」(ベレ出版)、「お山の幼稚園で育つ」(世界思想社)。

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